1品目 全自動くすぐりステータスチェッカー

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始まりは何てことのない日常から

私、フィオが『あかりや』に出会ったのは偶然でした。

私はただ、メロウ村北にある森の魔物退治に来ただけでした。たまに冒険者ギルドに送られてくる、何ら変哲もない依頼。

15歳から冒険者を始めて、今年で3年目。もう慣れたものです。

 

私が今いるのは、きれいな水が流れる泉の側。森に来た時に必ず訪れる、秘密の休憩所です。

泉の水を飲んでいると、水面に私の姿が映りました。

金色の短い髪は、小さい頃からお父様にため息をつかれてばかり。この国の女性は、髪を長く伸ばすのが当たり前だから。

軽い片手剣と皮の鎧は、動きやすさを1番に考えています。幼い頃から冒険者を夢見ていた私は、生まれてこの方恋人なんてできたことがありません。

「別に、良いけどね」

私は本心のとおり呟いて、剣に付いた返り血を拭いました。

「たまには違うところも行ってみようかな」

いつもなら、仕事が終わったら村の宿に帰るだけ。だけど、ふとそんなことを思って、もう少し歩きます。

歩き疲れて『そろそろ戻ろうか』と思った矢先、森の反対に抜けました。

 

「……家?」

人の手が入っていない草原が広がり、視界の遠くに建物がポツリと見えます。

煙突から煙が出ている、どうやら人がいるようでした。こんなところで不便だろうに。

日が落ちるにはまだ時間があります。何となく、私はその建物に近づきます。

「あか、り、や」

そして、剣を腰の鞘に納めながら、大陸語で書かれた看板を読み上げました。

 

あかりや。

そう、『看板』。看板があるということは、どうやらここはお店のようです。

こんな草原のど真ん中で、それも魔物が出る危険な森を抜けた先に。冒険者か衛兵か、とにかく戦う術を持った人でなければ来れっこありません。

怪しい。だけど、それ以上に興味がある。こんな草原のど真ん中で、一体何を売るのでしょう。

私は戸を開きます。ほんの少しの警戒心から、腰の鞘を握りながら。

そのお店には、太陽のような店員さんと、月のような店主さんがいました

「いらっしゃいませーっ!!!」

思わず身体が跳ねるほどの大きな声が響きます。1人の女性が、待ち構えていたかのように扉の真ん前に立っていました。

赤紫の短い髪に真っ赤な瞳。ぺかーっと光る笑顔は、まるで太陽のよう。

だけど、私の視線は眩しい笑顔ではなく、身体の方に行ってしまいます。女性にしては少し高めの背に、大きな大きな胸。同性の私ですら、ゴクリと喉を鳴らしてしまうぐらい。

その人は、凄くきれいな女性でした。

だけど、どうしてメイドさんの服なんだろう? 私にはその理由が分かりません。

 

「お客様タイミングが良いっ、先日港町スーから素材を仕入れたばかりで商品が充実していますよー! 例えばこちらの『白き原駆け巡る娘』、女の子のようなかわいらしい手ですが自立式で浮遊式。起動するとロウソクが1本燃え尽きるまでの時間、使用者の全身ありとあらゆる場所を延々と責め立てちゃいます! たくさん使えば使うほど快感っ、お値段は1つにつき王国銅貨2ぃー枚っ!!」

太陽さんが、まくし立てるように話しかけてきます。だけど、何を言っているのか全然分かりません。

そうこうしている内に、私の顔は少しずつ引きつっていきます。

彼女の声に揺られるように、背中でコウモリのような黒い羽根がパタパタとはためいていたから。

それと、頭飾りの向こうには小さな角が、スカートの裾からはにょろんとした尻尾もあります。あまりの勢いで今まで気付かなかったのです。

 

「ま、魔族っ!?」
「んぇ?」

私は一歩後ずさり、腰に掛けた剣の柄を握りました。彼女がいつ襲いかかってきても切り払えるように。

いつの時代だって、人間と魔族の関係は良くありません。今は幸い停戦中ですが、だからと言って安心できるわけではないのです。

私は彼女を睨み続けます。だけど、彼女はきょとんとした表情を浮かべるだけで、身構えようともしません。

「……」
「……」

しばらく沈黙が流れて、何だか気まずい空気になります。

「……あっ」

彼女はようやく、ゆっくりと口を開きました。

 

「もしや彼氏さんとお愉しみのご予定でしたかー? それは失礼いたしました。それでしたら、まずおすすめなのはこちらの無限ローション。一見変哲もない魔導石ですが、魔素を粘液化させてヌルヌルオイルを生み出す優れモノ。一晩経っても乾きませんし、洗い流すのも簡っ単っ! 三日三晩たっぷり楽しめる大容量でなんと王国銀貨1ぃー枚っ!!」

太陽さんの口が止まりません。

これは、そう。王都の高級住宅区にある、貴族たちが行くような洋服屋さんに間違えて入ってしまった時のよう。

2度と、馬よりも高い服を買わされるわけにはいきません。だけど、どう断れば良いのかが分かりません。

「その他、彼氏さんに持たせたい、あーんな道具やこーんな道具も取り揃えていますよー! 例えばこちらの商品なんですが……」
「あ、えっと。そのぉ……っ」

そんな風に困っている、その時でした。

 

「過剰なセールストークは禁止だ」
「あ痛ぁっ!」

突然、女性の頭に分厚い本が叩き込まれます。しかも、角。

痛そう。その場で『おおぉ……』と呻きながらうずくまる彼女を見ながら思いました。

「すみませんね、ウチのバカが」

その背後には、また別の女性が立っていました。分厚い本を肩に背負って、少し申し訳なさそうに笑っています。

「あ、いえ」

色々と頭が追いつきません。私はそれだけ返して、真っ黒なローブを羽織った女性を見つめました。

女性、いや女の子?

どちらで呼べば良いのか迷う、そんな見た目です。顔つきは幼い。背丈、それと胸も小さい。だから、どちらかと言えば女の子のはず。

だけど、その落ち着いた声と雰囲気からは、不思議な老齢さを感じさせます。

腰まで伸びた銀色の髪が美しい。そして、夜空色の瞳は優しい。

私は思いました。さっきの人が太陽なら、この人はまるで月だ、と。

 

「店主のユウです。そっちのバカは店員のエミアス。それで、何をお求めで?」
「はっ!」

そう言われて、私はようやく我に帰りました。

思わずじぃっと見つめてしまいました。迷惑ではなかったか、少し不安です。

「あ、その。ここって、どういうお店ですか……?」
「あぁ、何だ。知らずに来たんですね」
「ギルドの仕事で、森の魔物を退治に来て、それで……」
「なるほど。暖かくなってきて、魔物も元気になり始める時期だ。それはお疲れ様です」

迷惑に迷惑を重ねるような返事に、私はますます申し訳なくなります。それでも、ユウさんというこの店の店主さんは淡々と、だけど優しく応えてくれました。

「ここは『あかりや』。いわゆる、あー、大人のおもちゃ屋です」

店主さんは少し目を逸らしました。

「おもちゃ」

私は聞いたままに返しました。内心は何というか、『はーん』という感じ。要は、ピンと来ていなかったのです。

それを察してか、店主さんはもう1度応えてくれました。

「言い直しましょうか。エッチな道具の店ですよ」
「エッ……!?」

私の顔がぼっと熱くなります。きっと、店主さんはこの反応を想像していたのでしょう。

「あなたに、この店の商品は合わないみたいですね」

決してバカにするわけではない、それでも伝わったことに満足したように、店主さんはクツクツと笑いました。

「『出て行け』と言うつもりはありません。見たところ疲れているようだし、ゆっくりしていってください」

『ただし、日が沈むまでには帰るように』、そう言って店主さんは奥にある椅子に座りました。

お店には、見たことのない魔道具が並んでいます

私は辺りを見渡します。

『お店』というには少し狭い、1人住むのがやっとという広さの部屋。そこに所狭しと置かれている商品は、どれもよく分からないものばかりです。

「魔道具、だよね……?」

直線や曲線、円、四角、星。たくさんの幾何学模様が、金属や石に折り重なるように刻まれています。それらは、魔道具に他なりません。

魔道具と言えば、魔術師でなくても魔術が使えるようになる便利アイテムです。

私も、野営で火を起こすために、手のひらに収まるぐらいの筒型の魔道具を持っています。まさに冒険者のお供と言えるもの。

だけど、そんな魔道具にも問題があります。

それが、値段が高いこと。理由は簡単、熟練の職人でなければ作れず、素材となる魔導石も貴重だから。

ものによっては、数十日分の稼ぎが、たった1回の魔術で消し飛ぶこともあります。

「手が出ないだろうなぁ……」

色とりどりの魔道具を前に、私はため息を付きました。

 

子供がどうやって生まれるのかは知っている、だけど『それ』をしたことはありません。

独りでシてみたことは……1度だけあります。だけど、胸とアソコをほんの少し指で触っただけ。何だか酷くいけないことをしている気がして、それっきりです。

そんな私だから、『エッチなことに使う』と聞くだけで凄く恥ずかしい。だけど、ここの魔道具は見ているだけで楽しい。『どんな風に動くのだろう』と考えるだけでワクワクしてしまいます。

 

私は意を決して、部屋の奥に座っている店主さんに訊いてみました。

「安くて、私でも使えるのってありますか?」

すると、店主さんではなく、棚の整理をしていた店員さん――たしかエミアスさんが飛びつくように反応しました。

「もっちろん、ありますよぉーっ!!」
「わっ!?」
「お一人様で愉しむのでしたらこちらの『蕩ける蜜の粘液体』! この親指サイズの小さな魔導石に水を掛けることでドロドログチョグチョのスライムを形成。身体を包み込んで責め立てるだけでなく、魔導石に刻まれた媚薬魔術が徐々に浸透し、使えば使うほど身体が敏感に!!」
「あっ、その、えっと、エミアスさん……」
「あ、私のことはエミィって呼んでくださいねっ」
「え、エミィさん……」
「はいっ、エミィさんですよー! それでこの商品なんですがね……」

エミィさんの口が止まりません。

この人、凄くキレイなんだけど、凄く賑やか。私、こういうのには弱いです。

「お客様、これは凄いですよぉ……!? くれっっっぐれも池や川に落とさないように!! ステキなステキな災厄になりますので! 最後には風に当たるだけで絶頂を繰り返してしまうほどの――ぅ痛ぁっ!?」
「度々すみませんね、ウチのバカが」

店主さんが、エミィさんの頭に本を叩き込んでから応えました。

「無理に買わせるのは気が引けます。それに、ウチの商品は特殊です。ウチが原因で性癖が歪んでしまったら、正直申し訳が立たない」
「あ、その。無理してるわけじゃなくて。その、興味が湧いて……」

私は声を絞りだします。きっと、顔は真っ赤になっていることでしょう。

だけど、店主さんは決して笑ったりしません。『ふむ』と鼻から息を吐いて、指を2本立てました。

 

「初めての方なら、私からのおすすめは2つ。ステータスチェッカーと防振結界です」
「へぇ……?」

ステータスチェッカーと防振結界。どちらも聞いたことがない魔道具です。

「防振結界のほうは簡単だ。部屋の振動、つまり音が漏れないようにする。時間はだいたい日が沈んでから昇るまで。『そういうこと』をしている音とか声を聞かれたら大変ですからね」

なるほど、それはもっともです。

「ステータスチェッカーは、少し説明しにくい。良ければ、あなたのステータス出してもらえませんか」
「は、はい」

「マスターぁ。何ですか、ステータスチェッカぁー、防振結界ぃーって。ダサい」
「エミィに言われたくないな。道具の名前は分かりやすくあるべきだ。何だお前の、『白い薔薇の……何とか』って。何だ」
「『白き原駆け巡る娘』! ちゃんと覚えてくださいよぉー!」
「無茶言うな。こんなネーミングがあと何十個あると思っているんだ」

きっと、仲が良いのでしょう。そんなやり取りをよそに、私は声を上げました。

「……ステータス!」

すると、目の前に四角い『枠』が浮き出てきます。

本を開いたぐらいの大きさ。白い枠に黒い背景。その中に白い文字が書かれています。

 

名前:フィオ

レベル:29
種族:人間
性別:女

攻撃力:70
防御力:78

筋 力:60
体 力:85

知 力:58
魔 力:15
精神力:41

素早さ:132
器用さ:103
 運 :39

短剣術Lv8 長剣術Lv5 体術Lv2
探知Lv9  鍵開けLv5 ……

 

ステータス。それは、自分が何者なのか、どれぐらいの強さなのか、何ができるのか。そんなありとあらゆる情報が載っているもの。

自分のステータスを開くことは、この世界にいるなら誰でも当たり前のようにできることです。それこそ、冒険者も衛兵も農家も、人王様も魔王も関係ありません。

「フィオさん、ね。若いのに大した能力だ」
「わっ」
「失礼。こういう数字が好きなもので」

いつの間にか、店主さんは私の後ろに回り込んでステータスを覗き込んでいました。だけど、またすぐに私の前に戻って、ステータスを指差しながら説明してくれます。

「私がまず、そのステータスに新しい項目を追加する。今ある枠の下に、同じ大きさの枠が1つ加わる感じでね。そしてステータスチェッカーを使って、数値を調べて入力する。そんな感じです」
「ステータスを、追加?」
「そう。それも、エッチな項目を実践形式で。つまり、エッチなことをしながら、自分のステータスがもっと詳しく分かるってわけです。あなた本人にしか見られないようにするので、そこは安心してください」
「へぇ……」

凄い魔道具だ! 私は最初にそう思いました。だけど、分かっていたはずなのに、『エッチなこと』と言われるとどうしても顔が熱くなってしまいます。

「ステータスが分かれば、紹介できる商品も出てくる。そういう意味でのおすすめ。まぁ、リピートありきですけどね」

店主さんは『さて、どうします?』とこちらの返事を待ちます。

他の商品を選ぶほどの知識はありませんでした。『買わない』という選択肢もありましたが、それを選ぶ気にもなりませんでした。

きっと大丈夫。

そんな安心感が、この道具やお店、何より店主さんやエミィさんにあったから。

「……それじゃあ、その2つをお願いします」
「ん、ありがとうございます」
「ありがとうございまーす!」

私は意を決します。店主さんと、その後ろにいたエミィさんは、優しく笑って応えてくれました。

 

その後、私はエミィさんに手を引かれて、お店の奥でお会計をします。

「それじゃ、王国銀貨5枚になりまーす!」
「銀貨5枚? こんなに凄い魔道具なのに、随分安いんですね」

私はあまりの安さに目を丸くします。今持っている火起こし用の魔道具だって、これよりずっと高い。

 

「マスターが言うんですよぉ。『生活費と材料費が稼げれば良い』って」
「はぁ」
「まっ、安くみんなが気持ち良くなってくれれば良いってことで! フィオちゃんも、気兼ねなく楽しんでくださいねっ」
「はは……」

エッチなことを話しているはずなのに、エミィさんは本当にあっけらかんとしています。魔族ならではの性格でしょうか。だけど、そのおかげで、いけないことをしているという罪悪感が少し軽くなりました。

 

支払いを終えると、椅子の側で店主さんが手招きしました。

「それじゃあ、こっち座って。ステータスを出して、そのまま待ってください」
「は、はい」

私は促されるまま椅子に座ります。店主さんが私のステータスに手をかざしました。

「……術式番号25469」

すると、店主さんの手から光が伸びます。白く平べったい、板のような不思議な光です。目を凝らして見ると、さまざまな幾何学模様が見えました。

これは魔法陣です。それも、ただの光の塊だと勘違いしてしまうぐらい、あまりに緻密すぎるもの。

「術式番号22037……」

店主さんは、そのままボソボソと何かを呟き続けます。ステータスの見た目は何も変わりません。だけど、きっと何かが行われているのでしょう。

 

「インストールしている間に、いくつか注意事項」
「いんすと、る?」
「こっちの話、注意だけ聞いてください」
「はい」

『注意』という言葉、それと店主さんのちょっとだけ真剣な声に、私の背筋が少しだけ伸びます。視線も魔法陣から離れました。

「まず、防振結界を使うのを忘れないこと。部屋の鍵もしっかりね。忘れたら大変なことになりますよ、社会的に」
「は、はぁ」

それもそうです。もし宿屋でエッチなことをしていることがバレてしまったら、2度と行けません。

「それと、もしウチの商品が癖になっちゃって、それを『嫌だ』って思うなら、必ず店に来てください。その部分のステータスをリセットします」
「り、リセット……?」
「とにかく、使った後は必ず1度来てくださいね」

とにかく、1度店に行けば良いようです。村にはギルドの仕事でたまに行くことですし、困ることはないでしょう。

「最後に、悪用しないこと」

店主さんはため息をつきながらそう言いました。まるで『言いたくないんだけど』という風です。

「たまにいるんです。ウチにも立場がありますからね、犯罪・迷惑行為は絶対に赦しません」

「……破ったら、商品の素材にしますよ…………」
「ひ……ッ!?」

ガラッと変わった冷たい声色に、背筋が凍る心地がしました。何か、とてつもないものを垣間見た気がします。

だけど、その声はすぐに優しいものに変わります。

「はい、もう良いですよ。これが商品、使い方を説明しますね」

店主さんはそう言って、2つの魔導石を渡してくれます。私は店主さんの説明にフンフンと頷き続けました。

 

「あの」
「はい、何です?」

することをしてもらって、支払いもして、商品も受け取って、説明もしてもらって。最後に私は気になっていることを訊いてみました。

「ここのお品物って、全部店主さんが作ったんですか?」
「えぇ、大体はね。ほんの一部、修行中の彼女が作っています」

店主さんが指す親指の先は、案の定エミィさん。『いえーい』と言いながらピースしています。

ここで売られている魔道具は、王都ですら見られません。魔術にあまり詳しくない私でも分かります。その知識、技術は『賢者』と呼ばれるに相応しい。

だけど、それを詳しく訊くのは悪い気がします。何となく、そこは私が立ち入ってはいけない領域のように思えたのです。

だから私はさて置いて、もっと素朴なことを打ち明けることにしました。

「意外です。店主さんみたいな落ち着いた方が、その、こういうものを売ってるって」

付け加えるなら、『自分とほとんど変わらない年なのに』。だけど、彼女の落ち着きすぎた雰囲気が、その言葉を忘れさせていました。

「もともとは自分用、商売なんて考えてなかったですよ。あそこのバカが『売ろう』なんて言い出したんです」

店主さんはそう笑って軽く手を振りました。

それはもっと意外でした。店主さんが、こんな魔道具を使っているなんて。

その事実だけで何だか少し恥ずかしい。どんな道具を使うのか、どういう風に使うのか、どんな風になるのか。そんなことを想像すると、さらに恥ずかしくなります。

「さぁ、もう帰ると良い」

私の考えが顔に出ていたのでしょうか。店主さんは、少し恥ずかしそうにしながら私の背中を押しました。

「良い夜を」

ドアを開くと、そろそろ日が傾き始めていました。

暗くなる前に、森を抜けないと。

そして、冒険の夜が訪れます

メロウ村の宿に戻った頃には、もう夕日が落ち始めていました。

夜の森は冒険者の私でもあまり歩きたくないものですから、ギリギリセーフといったところです。

そして、食事を摂って、日が沈んで、いよいよランプなしでは出歩けなくなる時間。私は鎧を脱ぎ、自室のベッドの上で独り頭を抱えていました。

「買っちゃった……」

目の前にあるのは、ランプの灯りに照らされた2つの魔導石。どちらも指1本がすっぽり入る、深いくぼみがあります。

あのお店、あかりやで起こったことは私の非日常。いざ日常に戻ってみると、とんでもない買い物をしてしまったと実感します。

「うぅ……」

やっぱり恥ずかしい。エッチなことのための道具なんて、そう気軽に使えるものではありません。触るのですら恐る恐るです。

だけど、安かったとは言っても、買ったのに使わないのはもったいない。それに、あの優しい店主さんとエミィさんに悪い気がします。

「……それに」

私はポツリと呟きながら、ゆっくりと手を伸ばしました。

「ちょっと、使ってみたい、かも……」

何だかんだ言って、結局のところはそれでした。

 

私が最初に手に取ったのは青くて小さな魔導石、店主さんが『防振結界』と呼んだもの。

私は1度ゴクリと喉を鳴らします。そして、魔導石のくぼみに人差し指を差し込んで、鍵を開けるように回しました。

「あっ……」

表面に刻まれた幾何学模様が、白く淡い光を放ちます。

一瞬の耳鳴り。私は、空気の流れが変わったのを感じました。向こうの森で鳴いていたフクロウの声が、いつの間にか聞こえません。

試しに、両手を合わせて『パン』と音を鳴らしてみます。乾いた音が鳴ったのは一瞬だけ。音は反響することなく、何かに吸い込まれるように消えてしまいました。

「凄い……」

どういう仕組みなのか、見当もつきません。

だけど、今日の本命はこれじゃない。とりあえず、どんなに声を出してもこれで大丈夫というだけです。

 

「ステータス、チェッカー……」

私が次に手を伸ばしたのは、防振結界よりもっと大きくて、複雑な魔法陣が描かれている黒い魔導石。

『エッチなことをしながら、自分のステータスがもっと詳しく分かるってわけです』

店主さんの言葉を思い出します。これを起動すると、もう戻れません。心臓がドクドクと激しく波打っているのを感じます。

使い方は同じ。魔導石のくぼみに人差し指をゆっくり差し込んで、鍵を開けるように指を回す。

自分の指のはずが、さっきよりもずっと重く感じられました。

 

「っ……!」

魔導石に刻まれた模様が白く光っていきます。

光が図形の上を走ったり、点滅したり。さっきの小さな魔導石とはまた違う、あまりに複雑過ぎる魔法陣。だけど、どこか規則性があって、整然としているような。

「きれい……」

私は思わず呟きました。

だけど、呆けている暇はありません。魔導石に込められた魔術は、すでに発動しているのですから。

「ぃひんっ!?」

私の密かな夜の大冒険は、そんな間抜けな声で始まりました。

私は生まれて初めて、『気持ち良い』感覚を知りました

「んん゛っ!? っひ……っ! ひぅ……!?」

突然、両耳にゾワゾワとした感覚が走ります。私の両肩がビクンと上がりました。

さわり、さわり。

「ひっ! ぅうん……!?」

視界の端で、小さな羽根が宙に浮いて、私の耳を優しく撫でているのが見えます。こんなもの、いつの間に現れたのでしょう。

「うっ、ひぃぃ……! くぅ……、だ、めぇっ!」

私は堪らなくなって、手で耳を押さえながら頭をブンブンと振り回しました。だけど、どういうことでしょう。ゾワゾワとした刺激はちっとも弱くなりません。

羽根は手を透けているのでしょうか。

『何が来ても』と覚悟していても、実際に始まってみるとやっぱり恐いものです。私は目をぎゅっと瞑りました。

「んっ、くく、はぁ……! なんか、変……っ」

だけど、恐くてくすぐったいはずなのに、それだけではないみたいです。全身の力を奪い取るような、思わず口がだらしがなく開いてしまうような。

耳をくすぐられるのは、変な感覚でした。

 

「くぅ、ん……っ!!? ちょっ、それ、だめぇ……っ」

そうこうしている内に、新しい刺激に襲われました。『エッチなこと』というのは、どうやら耳をくすぐるだけでは終わらないようです。

今度は首。いつの間にか増えていた2本の羽根が、私の首筋を挟み込むように撫でていました。

「はっ、あぁ……! だめ、声、でちゃ……。ふゃあぁぁ………」

私の首は耳よりも敏感のようです。触り方はいっしょのはずなのに、今まで感じていた、よく分からない変な感覚が何なのかを理解してしまいます。

「きもち、ぃ~……」

思わず漏れてしまった言葉のとおりです。耳や首をくすぐられるとゾワゾワして鳥肌が立つのに、何だか嫌じゃない。

上がっていた私の両肩が、自然と下りていきます。口もぽかんと開いて、吐息が漏れます。

何だか、ずっとこのままされていたい。そして、そのまま眠ってしまいたい。そんな感じです。

 

だけど、『エッチなこと』というのは、本当に簡単には終わりません。

「んう゛っ!? ま、待って! なにやっ、てぇっ!?」

また新しく来た刺激に、思わず悲鳴を上げてしまいました。

いつの間にか現れていた2つの白いが、私の胸を揉んでいたから。

「うぅ……。これは、だめだよぉ……っ! ひんっ!?」

慣れない刺激に、私はそう大きくもない胸を抱え込みます。

だけど、この手も羽根と同じ。よく見ると、私の腕や服を透けているようでした。これでは、何をしても逃げられません。

「くっ、ひっ……! くっふふ……!? うぅぅぅぅ……」

手首から先しかない手は、指先までスラッとしていて、とてもきれい。

そんな手に胸を揉まれるのは何だかくすぐったい。そして少し恐く、とても恥ずかしい。

『エッチなこと』をしている実感が嫌でも湧いてきます。

 

「ぅひゃあぁぁぁぁぁっ!!?」

そしてまた、新しい刺激に悲鳴を上げる私。

始まってから悲鳴ばかり。だけど、今度は思わず飛び上がってしまうぐらい大きく驚きました。

耳、首、胸と来て、今度は太もも。それも脚の付け根のかなりきわどいところを、手で優しく撫でられています。

「そこはだめっ! そこはだめぇっ!? そこはエッチだからぁっ!?」

身を守る女性の本能でしょうか。そこを触られるのは、他のどこよりも恐く感じられました。

だから、私は脚をきゅっと閉じます。だけど、やっぱり白い手は私の抵抗を嗤うように透けるのです。

「ぅうぅぅぅっ……! う゛ぅぅぅぅ……っ!!」

下着に触れないギリギリの場所を、手のひらで優しく撫でられ続けます。

女性のようなスラッとした手は、とてもスベスベしています。私の太ももはじっとりと汗をかいているはずなのに、驚くほどなめらかに動きました。

 

「ぅぅ、何なのこれぇ……っ。おかしいよぉ……」

耳と首をくすぐられて、胸を揉まれて、脚の付け根を撫でられる。

独りでエッチしていれば、手が足りなくて絶対に起こらない状況です。2人でもいっしょでしょう。

私は恥ずかしさと怖さのあまり、最初こそ身を縮込ませてぷるぷる震えるだけでした。

だけど、私を責める羽根と手の動きはあまりに単調で、不意を突くような動きを決してしませんでした。

すると、身体を撫でられるリズムが分かってきます。そして、全身に力を込め続けるよりも、そのリズムに身を委ねたほうが楽なことに気付きます。

「っ……。ぅうぅ、ぅあぁぁ~~~~……」

「ふっ、ぅうんっ! はっ、ぁぁ……!」

「ひひゃんっ! ぁ、ひゃぁぁぁ……」

 

つまり、緊張がほぐれてしまったのです。

「ぁっ、はぁぁ……! これ、きもひぃぃ~~~~……」

いつの間にか、私はベッドに仰向けに寝転がってうっとりとしていました。

「ぅひんっ!? ぁ、それ……もっとぉ……っ」

ゾワゾワ、ゾクゾクとした優しい刺激が本当に気持ち良い。

時折、強い刺激が来て腰がビクンと跳ねます。それもまた、快感が身体の芯にまで届いている気がして堪りません。

きっと、今の私はとてもだらしがない顔をしているのでしょう。だけど、こんなに気持ち良かったら止められません。

『これがエッチなことなんだ』

快感を受け止めながら、そんなことを思っていました。

 

だけど、です。

「ぁ~~~~……ぁ、ぁ……? あれ、なんだか、よわ、く……?」

快感が小さくなっていきます。

辺りを見渡すと、私のことを撫でていた羽根や手が、みんな霧のように消えてしまいました。

「もう、終わり……?」

今は夜で、この村には教会の鐘がありません。正確な時間は分からないけど、まだほとんど時間は経っていないはずです。

「…………残念……」

物足りない、私は素直にそう思いました。せっかく気持ち良くなってきたばかりなのに。

 

だけど、私はある異変に気付きます。

「あれ」

身体が動きません。

ベッドに仰向けになって寝転がって、腕と脚を軽く開いたままの姿勢。動かないのは、両手首と両足首。

気持ち良さで力が抜けてしまったわけではありません。何か強い力で、それでも優しく押さえ付けられているような感じです。

「何これ、こんな、知らな……」

そして私は、これがどういうことなのかを理解する前に、悲鳴を上げることになりました。

今までのはほんの下ごしらえ。本番はこれから

「んふっ!!? んぐっひ……!? なひっ!?」

仰向けに寝ている私の、腋の下に刺激が走ります。両手と両足が動かないから、頭だけを持ち上げて自分の身体を見ました。

すると、2つの羽根が、私の腋の下を撫でていたのです。

終わってなかった、また始まったんだ。

私が思ったのは、そんなのんきなこと。続きがあることに嬉しくなりながら、新しい刺激を受け入れようとしました。

 

だけど、何だかうまくいきません。

「んひっ!? な、何か、おかひ……っ! ぅひひひひっ!?」

気持ち良いというより、ただくすぐったい?

口から笑い声が出ます。

私の頭の中がハテナでいっぱいになっている間に、その刺激は明らかなくすぐったさに変わっていきます。

「待って、止まって……! ぇへっ!? 止まって止まってとまってとまって……っ!?」

違う、このくすぐったさは違います。私はもっと、ゾクゾクするような、優しくて甘いくすぐったさが欲しいんです。

最初は故障かと思いました。

腋の下にこびりついている羽根を散らすように、身体をバタンバタンとベッドに叩きつけてみます。

だけど、両腕と両脚を軽く開いて寝るという姿勢は、くつろぐには良いけれど、暴れるには力を込めにくい。おまけに、両手と両足は相変わらず動かない。

そもそも、何をしてもくすぐったさは全然減りません。羽根は抵抗も服も関係ないという風に、色々なものを透けて腋の下をくすぐり続けるのですから。

「あっはっ、はっはひひひっ!? まっへ、おかひ、おかひぃってぇえっひゃっはっははははははははっ!?」

もう、うっとりした気分なんて吹き飛んでしまいました。私はただただくすぐったくて、笑っていました。

 

「うひぃいぃぃっ!? ひっひひ――なひゃっ!? ぁあっはっはっはははははははははははっ!! そぇ、くすぐっひゃぁっひゃっひゃっははははははははははは!!」

腋の下のくすぐったさが変わりました。今までよりもっと鮮明で、強烈なくすぐったさ。

頭を持ち上げて見ると、腋の下をくすぐっているものが羽根から手に変わっていました。

「てぇぇっ、だめぇっぇえぇっへへへへっ!! くすぐったひっ! くすぐったひからぁあぁぁぁぁっ!! あぁあぁぁっはっはっははははははははははははははははっ!!」

指先がコチョコチョと素早く動いています。目で見るだけでなく、腋の下のくすぐったい感覚でも分かるほどに。

目からは涙がこぼれました。こんな無防備に激しくくすぐられたことなんて、今までの人生で1度もありません。

 

「ふぃいぃぃぃっ!!?」

くすぐったさがまた変わります。

今度はグチュグチュ、ヌルヌルとした刺激。涙が溜まった目で腋の下を見てみると、今度は魔物の触手のようなものでくすぐられていました。

「うぎっ! ぃぎっひひひひひひ!? ぬるぬぅ、やあ゛ぁぁぁぁっ!? ぬぅぬうやめへぇぇっへへへへへへへへへへ!! へひゃぁあぁぁぁっはははははははははははははは!!!」

その触手は羽根や手と同じで白い。先っぽが小指の先よりも細くて、赤ちゃんのほっぺのように柔らかい。

だから、こんなに乱暴なのに全然痛くない。そして、痛くないからこそ、酷くくすぐったい。ヌルヌルされるのが、さらにくすぐったい。

「んぐっふふふふふっ! んぐひっ!? ぅ゛うぅぅぅぅぅぅぅぅっ!! う゛ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」

私は歯を食いしばって耐えました。くすぐったいけれど、何とか耐えられるくすぐったさだったから。

みっともなく鼻息を荒くして、女性らしくない声が出ているけれど、そんなことを考えている余裕はないのです。

 

「んぐっひ、ひひひ!? ひひ――ぃひゃあ゛ぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

だけど、また変化。

柔らかかった触手の先が、爪のように硬くなりました。そして、私の努力が全てムダになりました。

「ぃあ゛ぁっはっはははははははははははははははははっ!!? かりかりっ!!? かりかりだめぇっへっへっへへへへへへへへっ!! 強ふぎぃいぃぃっひゃっはっはっははははははは、ぁはぁぁぁっはははははははははははははは!!!?」

まるで、ヌルヌルを爪先でこそぎ落とすような、カリカリとした動き。

普通ならヒリヒリ痛そうな動きも、ヌルヌルしていれば全てくすぐったさに変わるようです。

単に手でくすぐられるだけでは絶対にあり得ないようなくすぐったさに、私は一瞬たりとも耐えられませんでした。

 

「あぁ゛っはっはははははははははははははははははっ!! ゆるひてっ! もう赦ひてぇえぇぇっへへへへへへへへへへへへへっ!!!」

その後、私は色々なもので代わる代わる腋の下をくすぐられました。

綿毛のように柔らかい何か、ビリビリとした静電気のような何か、グチュグチュしていてイボイボしているおぞましい何か。

1つ1つのくすぐったさは、息を吸ってから吐き切るまでのほんの僅かな時間。それでも、数が多ければとんでもない時間になります。

むしろ、くすぐったさに慣れない間にどんどん新しいくすぐったさに襲われて、同じくすぐったさが続くよりも辛い。

 

「ぜひぃっ……! あひっ……、ぁ、ぁぁ……っ!」

くすぐったさが止まりました。

私はもう息絶え絶え。胸が締め付けられるように苦しい。身体に力が入っていたからか、全身もぐったり。

「お願い、もう止めて……。赦してぇ……っ」

思わず泣き出しそうになってしまいます。それぐらい、くすぐったかったのです。

だけど、身体はまだ動きません。相変わらず、手足が見えない何かに押し付けられたままです。

まだ終わっていないことが分かるからこそ、私は『赦して』と言わざるを得ませんでした。

 

「いや、もうい――やはぁっ!!?」

そして、私のお願いなんて聞こえていないという風に、新しい場所にくすぐったさが走りました。

今度はお腹。

「おにゃかぁあぁぁっひゃっはっははははははははははははは!!? やぁあぁぁあっはっはっははははははははははははははははっ!! はやぁあぁぁっひゃっはははははは、ひゃぁあっははははははははは!!?」

また、私は笑いだしました。

羽根や手、触手、よく分からない何か、とにかく色々なくすぐったいものに襲われます。

「だめっ!!? おにゃか揉まにゃいでぇえぇぇっへっへへへへへへへへへへへへへっ!! おへしょほじほじしちゃいやぁあぁぁっはっはっはっはっはひゃぁぁあぁぁっははははははははははははははは!!!」

どうしてこんなことに?

そんなことを考える余裕はありません。色々なくすぐったさでくすぐられて、それが終わったら、また別の場所をくすぐられるのですから。

頭の中は『くすぐったい』『赦して』、それぐらいです。

 

くすぐったさが全身を1ヶ所ずつ包み込みます。それも、隙間なく。

腋の下から始まって、お腹。胸に上って、背中と腰に回ります。そのまま下がって、お尻と、その前のイケナイところ。太ももを囲んで、膝にまとわり付き、ふくらはぎを襲います。

「くすぐたひぃぃぃっひっひっひひひひひひひひひひ!! くすぐったひくしゅぐったぃくううっあぃぃぃっひゃっはっはははははははははははははははははははははははっ!!!」

くすぐったい、くすぐったいくすぐったいくすぐったい。

涙がこぼれ続けて、汗が溢れ続けて、私の全身は頭から足先までグショグショです。笑いすぎて喉が焼けついて、時折咳き込みます。

身体は疲れすぎて、自分の意志では動かせない。だけど、くすぐったさにだけは敏感に反応し続ける。まるで、自分の身体が自分のものでなくなったみたい。

私の頭は、とっくにおかしくなってしまったでしょう。

だけど、身体の1番下に到達した時、私の身体と意識はいっきに覚醒します。

1番くすぐったいところは、本当におかしくなるぐらい、くすぐったいのです

「ぃい゛い゛いぃぃぃぃぃッ!!!?」

一際高い悲鳴。

私は、歯が割れてしまいそうなぐらい食いしばりました。あれだけ笑い悶えていたのに、身体はこんなにぐったりしているのに、まだこんな力が出るんだと思うぐらい。

今くすぐられているのは足の裏。そよそよと風がなびくような、優しい優しい羽根のくすぐり。

それだけで、このくすぐったさです。私は一瞬で、自分にとって1番くすぐったい場所を理解しました。

そして、これから何をされるのかを想像し、背筋がゾッと凍りました。

「そこはだめ」

私は思わず呟きました。

これ以上はダメ、これ以上は本当におかしくなる。

「きひっ!? ひひゃっ!!?」

だけど、くすぐったさは止まりません。それどころか、どんどん強くなるのです。

「待って、まってへひっ! まって、まってまってまっへぇぇぇぇっひひひひひひひっ!!?」

「だめっ!! 強くしひゃぁあぁっひゃっはっはははははははひぃいぃぃぃぃぃっ!!?」

「あぁぁぁっ!! あひっ!! ぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ぁあ゛あぁぁぁぁっはっはっはははははははははははははははッ!!! いや゛ぁぁぁっはっははははははははははははははっ、ぁああぁぁぁっははははははははははははははははははははははッ!!!?」

くすぐり方は、きっと今までといっしょのはず。

だけど、くすぐったさは全然違います。それに、シーツに足の裏を擦り付けても、ちっともくすぐったさはなくなりません。

他のところよりもずっと長くて、辛い時間が始まりました。

 

「ふぃいぃぃぃ!!? しゃわしゃわっ!!? しゃわしゃわしちゃやひゃぁあぁぁっはっははははははははははははははははっははははははははは!!!」

たくさんの羽根が足の裏を包み込みます。

指の間がとくにくすぐったい。両足で10本ある指の間全てに羽根が入り込んで、指の股をこそこそと撫で回します。ゾワゾワした刺激が私の膝をビクビクと勝手に動かしました。

 

「ぃぎっひひひひひひひひぃぃぃッ!!? あひが!!? 足が壊れぅぅうぅぁあっひゃっはっははははははははははははははッ!!!? いやぁあぁっははははははははははははははッ!!!」

爪でカリカリと引っかかれます。

指の付け根が凄い。いくつもの指が折り重なって、付け根の膨らんだところを往復します。身体の芯にまで響くくすぐったさに、大きく開いた口がガクガクと震えました。

 

「んひゅぅッ!!? ぅひゃぁあぁぁっはははははははははははははは!!! ぬるぬぅ、ぬるぬるはダメだってぇえぇぇぇっへっひゃっはははははははははははははははははははッ!!!」

ヌルヌルの触手が這い回ります。

土踏まずはダメ。とても細くて、柔らかくて、だけど芯の硬いものが土踏まずをチュルチュルとほじくります。足の裏の感覚がおかしくなって、もう立って歩くことができなくなってしまいそう。

 

「うぎぃッ!!? 痛ぁ!!? いだ――ぐないけどぉおぉっほほほッ!!? いや゛ぁあぁぁぁっはっはははははははははッ、ぅぎぁあぁぁっははははははははははははははははははは!!!」

人の歯のようなものが、ゴリゴリと足の裏を擦ります。

あまりに乱暴な責め。だけど、ヌルヌルにされた後だからちっとも痛くなくて、堪らなくくすぐったい。

皮が厚くて今までくすぐったくなかったかかとが、今まで感じたことのないくすぐったさに包まれました。

 

「多すぎッ!! おおふぎぃぃっひっひゃっはっははははははははははははは!!! とめて止めてとえてぇえぇぇっへっへへへひひひひひひゃぁっはははははははははははははははははは!!!」

指の間、付け根、土踏まず、かかと。

同じ足の裏でも、くすぐるものが変わる度に、1番くすぐったい場所が変わります。だから、慣れようとどんなに意識を集中しても、結局翻弄されてしまう。

抵抗なんてこれっぽっちもできません。私はただくすぐられて、それを全て受け入れて、素直に反応するしかありませんでした。

 

「ぁ……ッ、あひ……! ひ……、ひへ……!」

あまりに長いくすぐりの後、ようやく動きが止まりました。

「へ、ひひ……っ!? くしゅぐ、ひゃいの……、止えてぇ……。ぇひ……!?」

もうくすぐられていないはずなのに、まだくすぐったい。時折、足の裏にピリピリとしたものが走って、腰がビクンと跳ねます。

くすぐったい余韻に翻弄されながら、ぼんやりと考えました。私は今、どうしてこんなことになっているのでしょう?

ふと横を見ると、ベッドの横に小さな枠が浮かんでいました。白い線と黒い背景。あれは私のステータスです。

何か、凄い勢いで文字が書かれているようです。だけど、涙が溢れすぎていて、そして身体が動かなくて見られません。

 

そうだ、ステータスチェッカー。

私はようやく今までの経緯を思い出しました。ステータスの調査が終わったのでしょうか。

だけど、私の頭に疑問が浮かびます。

『これって本当にエッチなこと?』

こんなに苦しいのが、こんなに辛いのが、何だと言うのでしょう。どうして、こんなものを買ってしまったのでしょう。

私は、あの店主さんを疑わずにはいられませんでした。

 

私はしばらくステータスをぼうっと見つめます。そして、その視界の端に浮かぶ光景に、火照った身体が瞬く間に冷えていくのを感じました。

私はくすぐられて、くすぐられた後、さらにくすぐられるのです

「まって」

羽根が、手が、触手が、とにかく色々なものが。宙に浮かんでいます。

「ちょっと、まって……」

それも、1つや2つじゃない。10まで数えても半分にすら達していない。それ以上数える気すら起こさせないほど、たくさん。

理解するのは難しくありません。まだ、終わってないのです。

 

「おねがいッ!! もうむりぃっ!! くすぐったいの、しんじゃうっ!! 死んじゃうよぉッ!!!?」

私は力を振り絞って暴れました。命の危機に脅かされると、人はビックリするぐらいの力が出るものです。

だけど、それでも、身体は動きません。

私を取り囲んでいたものが、ゆっくりと近づいてきます。

「おねがい……! おねが――ぃや゛ぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

全身がくすぐったさに包まれました。

 

「ぃぎゃぁあぁぁっひゃっははははははははははははははははははッ!!!? くしゅぐっひゃッ!!! くひゅぐっひゃいぃいぃぃっひゃっはははははははぁあぁぁぁっははははははははははははははははははッ!!!」

恐怖や疑念、さまざまな感情がくすぐったさに吹き飛ばされました。

「つよふぎぃいぃぃぃっひひひひひひッ!!! つよひゅぎいぃぃぃぃっひっひゃっははははっははははははははははははははッ!!! ずるぃずりゅぃいぃぃぃぃぃぃぎゃっはっははははははははははははははははははッ!!!?」

涙でグシャグシャの目では、もう何も見えません。それでも、どこをどのようにくすぐられているのかは鮮明に分かります。

腋の下は1度ヌルヌルにした後、爪でこそぎ落とすように。

脇腹は指を食い込ませてツボを揺らすように。

太ももは羽根で優しく撫でるように。

今まで散々くすぐられていたのに、それでも感じたことがないぐらいくすぐったい。

それは、全身をくすぐられているからだけではありません。どこを、どんな風にくすぐられるのが弱いのかを知られているからでした。

 

とくに、足の裏が凄い。

「ふぎぃぃいぃっひひひひひひひひひゃあ゛ぁぁっははははははははははッ!!!? あひッ!!? あしがぁッ!!? おおすぎ!! おぉふぎぃぃぃぃやっはははははははははははははははは!!!? あしはやめへぇえぇっへっへへへへへひゃひゃひゃぁっははははははははははははははははははははははッ!!!!」

指の間を羽根で擦られる。指の付け根を爪で引っかかれる。土踏まずを触手でほじくられる。かかとを歯で甘噛みされる。

1番弱いところを、1番弱い方法でくすぐられる。それは人を殺せるぐらい、強烈なくすぐったさです。

 

獣のような笑い声を上げている私を見れば、誰でも絶句するでしょう。

端から見れば、拷問か、処刑か。私だって、今すぐにでも死んでしまいそうな心地。

だけど、後に私は知ります。

これこそが、店主さんが思い描いていたもの。本当の本当に、『エッチなこと』だと。

 

「あはひ!!? ぃひぃいぃぃぃんッ!!?」

新たな刺激が身体を襲いました。だけど、人を殺すようなくすぐったさではありません。明らかな快感です。

今まであまり触れられていなかった胸の先っぽを、優しくくすぐられていました。

「そぇ、らめッ!!? えっひ、えっちぃっひひひひぎゃぁっひゃっはははははははははははははッ!!!? はひゃっ、ひゃぁあぁぁぁぁっはっはっははははははははははははははッ!!!!」

涙で見えなくても、何となく分かります。

少し硬い羽根のようなものが、こしょこしょと胸を撫でています。敏感になり過ぎて、毛の1本1本が乳首を引っかいていくのすら感じられるぐらいでした。

きっと、今日の夕方までなら、胸をくすぐられても不快感しかなかったのかもしれません。

だけど、今日初めて、この魔道具を使った最初に、胸を触られる悦びを知ってしまった。

気持ち良い。私は明らかに快楽を感じてしまいました。あれは、この時のための下ごしらえだったのです。

 

「ぃッ!!? ~~~~~~~~ッ!!!!?」

そしてまた、新しい快感。今度は脚の付け根。

あまりに強すぎる刺激に、私は声にならない悲鳴を上げました。

中には挿入っていません。だけど、その上、何だか凄く敏感なところ、お豆のようなところをクリクリと責め立てられています。

「ぁあ゛あぁぁぁぁぁぁあッ!!!? あぁぁぁぁぁあぁぁ~~~~ッ!!!?」

ヌルヌルしていて、指よりも柔らかい何か。

凄く敏感だから、指で触ればきっと痛い。だからこそ、優しすぎる責めが堪らなく気持ち良い。

「あひぃいぃぃぃぃッ!!!? ぃひん!! んひゃぁ゛ぁぁぁぁっはっはははははははははははははははははははははッ!!! はひッ!!? らめッ!!!? ぇひゃあ゛あ゛ぁぁぁっははははははははははははははははは!!!!」

思わず、笑い声の中にいけない声が混じってしまうぐらい。

 

身体がどんどん敏感になっていきます。くすぐったさの奥にあった感覚が鮮明になっていきます。

そして、私は気付きました。

腋の下をほじくる触手も、脇腹を揉みほぐす手も、足の裏を犯し尽くす無数の何かも、全部が全部。

ただくすぐっているだけではない。これは、私が1番気持ち良くなるくすぐり方なんだと。

 

何かがカチリとはまった気がしました。

「ぁあ゛ぁっはっはっはっはっははははははははははッ!!! きもひぃ!!? こちょこひょ気持ひぃいぃひゃっはっはっはっははははははははははははははッ!!! あ゛あぁぁっはっはっはっははははははははははははははははははは!!!!?」

暴れだしてしまうような強烈なくすぐったさの奥に、ねっとりとした快楽を感じました。

マグマのように熱くて、溶かした砂糖のように甘い。

これは、だめ。

気が付いてしまったら、後は一瞬でした。

「あぎぃっひひひひひひゃっははははははははははははははッ!!!? な゛!! なんかぁ゛ッ!!!? ぁ!!! ひ!!? だめ゛ッ!!!? ~~~~~~~~~~ッ!!!! ひゃぁあ゛ぁぁぁぁぁっはっはっはっはははははははははッ!!!?」

今まで私の身体が溜まっていた何かが、いっきに溢れ出すのを感じます。

何か、凄い何かが来る。

恐い。

だけど、私に止める術なんてありませんでした。

 

「ぃあ゛ぁッ!!!? ~~~~~~!!!! かはッ!!! ~~~~~~~~~~ッ!!!?」

私の身体が大きく跳ね上がります。

全身を駆け巡る快感に、今までで1番大きな悲鳴が溢れました。

凄い、凄い、凄い。きっと、これがイクということなんでしょう。

イクのは、生まれて初めてです。

「イう゛ッ!!! いっひゃは……ッ!!!? イっへひッ!! ~~~~~~!!! あはひひッ!!!? ~~~~~~~~~~ッ!!!!!!」

イクのが止まりません。

胸やアソコの快感が、全身のくすぐったさが止まらないから。

「ぅひッ!!!? あし、あしッ!! くひゅぐっひゃッ!!!? ぃひゃっはっはっはははははッ!!! ~~~~~~ッ!!! ~~~~~~~~~!!!!!」

あぁ、全身が、足の裏が凄い。

くすぐったいのが、こんなにアソコにまで響いてくる。

「きもちひ……ッ!! ~~~~~~!!!! こひょこしょっ、かりかひ……ッ!!!! あはひッ!!! ~~~~~~~~~~!!!」

全身をくすぐられながら、気持ち良いところを気持ち良くさせられて、頭のなかが真っ白になりました。

考えられたのは、1つだけでした。

『エッチなこと』って、凄い。

 

「~~~~~~~~~~!!! ~~~~~~~~!!? ~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!」

気持ち良さはしばらく続きました。

イクのは泉の水面のよう。1度大きく波立つと、ちょっとやそっとの時間では収まらないのです。

初めての経験をたっぷり味合わせるかのように、羽根が、手が、触手が、とにかく色々なものが、長く、激しく私を責め続けました。

激しい情事の後、とんでもなく恥ずかしい現実を突き付けられました。だけど……

全てが動かなくなった後、私はしばらく何もする気がせず、ぼうっとしていました。

あんなに汗をかいて、全身をグチュグチュされていたから、シーツも服も、下着もびしょ濡れです。『普通、服脱いでから使うよね』、そんな後悔をするのも億劫でした。

今あるのは、疲れと幸福感。

「……店主さん、疑ってごめんなさい」

それと、ほんのちょっとの罪悪感でした。

 

「……あ、そうだ!」

私は大切なことを思い出し、ベッドから起き上がります。

「えっと、ステータスっ! ……ごにょごにょ」

そして、ステータスを開き、鍵となる呪文を唱えます。すると、いつものステータスの下に、新しい枠が浮き出てきました。

「これが、新しいステータス……?」

そこに映っていたのは人。たぶん私の身体です。白い線で描かれている全身は、場所によってさまざまな色で塗られていました。

青、緑、黄、赤。これは、一体なんでしょうか。何だかいまいちピンと来ません。何となく、私は赤くなっている部分に触れてみます。

すると、ポンッと文字が浮かび、色々なことを理解することになりました。

 

左足裏
感 度:103
性 感:84
抵 抗:68
弱 点:爪で全体を往復するように

 

「あ…っ」

偶然押してしまった、1番くすぐったかった項目。私の顔が燃えるように熱くなりました。

 

右足裏
感 度:106
性 感:90
抵 抗:59
弱 点:爪で全体を往復するように

 

「ぁ……、あぁ……!?」

だけど、画面を押す指は止まりません。

 

右足裏 – 指の間
感 度:65
性 感:98
抵 抗:32
弱 点:羽を差し込むように

右足裏 – 指の付け根
感 度:102
性 感:87
抵 抗:65
弱 点:爪でくまなく引っかくように

右足裏 – 土踏まず
感 度:101
性 感:90
抵 抗:55
弱 点:ヌルヌルの触手を這わせるように

右足裏 – かかと
感 度:58
性 感:41
抵 抗:31
弱 点:歯で優しく甘噛するように

 

「ぁ、わ、わ……!!?」

ステータス。それは、自分が何者なのか、どれぐらいの強さなのか、何ができるのか。そんなありとあらゆる情報が載っているもの。

そこに新しい項目が刻まれました。

どこが、どれぐらいくすぐったいのか。どれぐらい気持ち良いのか。どうされると1番くすぐったくて、気持ち良くなってしまうのか。

私が弱いところが赤く塗られていて、一目でも分かるように……。

「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

……防振結界のおかげで外に声が漏れなかったのは、本当に幸いです。

 

私は頭を沸騰させたまま放心しました。

「ぅ、う、ぅうぅぅ……」

こんなもの、他人には絶対に見せられません。それどころか、自分で見るのすら恥ずかしい。

『封印! ずっと封印!!』

思わず、頭の中で叫んでしまうぐらい。

「……うぅ~~……」

「……ぅ……」

「…………」

 

「…………んぅ……っ」

だけど、先程までの感覚を思い出してしまいます。身体に残る余韻に、身体が自然と震えてしまいます。

『エッチなこと』。あんなものを1度覚えてしまったら、もう忘れられない。忘れたくない。

「お店。他に、どんなのがあるのかな……」

私はぽつりと呟いた後、ハッと我に返ります。枕に顔を埋めて、脚をバタバタとさせました。

「か、『必ず1回は来て』って言われたもんね!」

防振結界の効果はまだ続いており、外の音はちっとも聞こえません。自分の鼓動が嫌に耳に入って、身も心も変わりつつあることを実感させられるのでした。

 

感度:くすぐったさ。高いほどくすぐったい
性感:気持ち良さ。高いほど気持ち良い
抵抗:抵抗の大きさ。高いほど強く暴れる
弱点:感度や性感がもっとも大きくなるくすぐり方
名前:フィオレベル:29
種族:人間
性別:女

腋の下
感 度:68
性 感:41
抵 抗:50
弱 点:ヌルヌルの爪で引っかくように


感 度:53
性 感:85
抵 抗:8
弱 点:羽根で乳首を撫でるように


感 度:60
性 感:24
抵 抗:62
弱 点:指でツボを揺らすように

秘部
感 度:8
性 感:70
抵 抗:21
弱 点:超軟性触手でクリトリスをこねるように


感 度:49
性 感:40
抵 抗:73
弱 点:極細触手で入り口をほじくるように


感 度:71
性 感:74
抵 抗:19
弱 点:手のひらで内股を撫でるように

左足裏
感 度:103
性 感:84
抵 抗:68
弱 点:爪で全体を往復するように

右足裏
感 度:106
性 感:90
抵 抗:59
弱 点:爪で全体を往復するように

右足裏 – 指の間
感 度:65
性 感:98
抵 抗:32
弱 点:羽を差し込むように

右足裏 – 指の付け根
感 度:102
性 感:87
抵 抗:65
弱 点:爪でくまなく引っかくように

右足裏 – 土踏まず
感 度:101
性 感:90
抵 抗:55
弱 点:ヌルヌルの触手を這わせるように

右足裏 – かかと
感 度:58
性 感:69
抵 抗:31
弱 点:歯で優しく甘噛するように

処女     後処女
胸快感Lv1   秘部快感Lv1   足裏快感Lv2

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